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「精密農業」がキーワード。ITと農業の掛け合わせで先行するディア&カンパニー

世界最大の農業国は中国、第2位がインド、そして第3位が米国です。

FAANGなどの話題ばかり聞いていると忘れてしまいがちですが、アメリカは農業大国です。

広大な土地で、大型のトラクターやコンバインが動いている映像をご覧になったことのある方も多いかと思います。

そのため、アメリカの農業は、広大な土地で大量の肥料と農薬で大量の収穫を得るイメージがなされているという印象が強いかと思います。

確かに以前はこうした傾向があったようですが、徐々に変わってきているようです。

世界的な人口増もあり、食糧需要はどんどん増加しています。

一方で都市化により農業人口は必ずしも増えていません。先進国ではむしろ減少しています。

必然の結果として、効率性・効果性を重視する傾向に進んでいき、今ではPrecision Agriculture(精密農業)という言葉も生まれ、ハイテクが駆使された農業が展開されるようになってきています。

そうした問題を解決すべく農業系ベンチャーも数多く生まれています。

今回はアメリカを代表する企業の一つである、大型トラクター・コンバインを作る世界最大の農機メーカーのディア&カンパニー(NYSE:DE)を紹介します。

世界最大の農機メーカー

ディア社は農機メーカーとしては、世界最大かつ北米でのシェアは約60%と言われています。

ビジネスとしては、大型の農機、小型の家庭用農機や芝刈り機のほかに、建設機械なども作っています。

(ディア社プレゼンテーション資料から)

機械関連の売上は、$36bil(約3兆77百億円)で、そのうち約6割が農機です。

ディア社は、これ以外に農機や建機を購入する際のファイナンス(分割払いなどへの対応)などの金融ビジネスも付随して行っています。

農機部門での競合他社としてはアグコ、CNHインダストリアルなどが挙げられます。

小型のものでは日本のクボタも競合に入るかと思います。

建機部門では、巨人のキャタピラーや日本のコマツなどが競合になります。

従来のビジネスモデルで言えば、農機の販売(ディーラーを通じて販売)が極めて循環性の高いものでしたので、農機の買い替えのサイクルによってビジネスのサイクルも決定づけられてしまうものでした。

まだまだそのサイクルから完全に開放されたわけではないので、影響はもちろん受けます。

前回のサイクルは2006年~2013年頃にあり、その時期から言われて来ていたのですが、買い替えサイクルが長期化してきているようです。

このサイクルは、収穫量による農家の収入の状況、政府の補助金(農機を買うための補助金もあったようです。今はそれが削減もしくは削除されてしまっている模様です)などの影響により決まって来ます。

もちろん、機械の性能や耐久性も上がっており、中古でも十分間に合うなどの問題も大きいかと思います。

とはいえ、そろそろ買い替えのサイクルが底打ちして、回復しつつあると見ているところが多いようです。

今後しばらくの間は、サイクル的な需要増が見込まれます。

「精密農業」で収益が安定

そうしたサイクルとは別に大きなトレンドが動きつつあることと、ビジネスのサイクル性を緩和するための努力を、ディア社は過去10年くらいかけて続けてきており、その成果を刈り取る時期に来ているように見えます。

これが精密農業への取り組みであり、ビジネスの安定化にも寄与するようになってきています。

従来の農業は、より大きく、より速く、より強く(Bigger, Faster, Stronger)でしたが、次世代の農業は、自動化され、使いやすく、より精密に(Automated, Easy to Use, More Precise)と言われています。

畑を耕すところから、種まき、肥料・農薬散布・収穫などの全ての工程でより効率的・効果的に農業を行うために、最新鋭の農機の開発と同時にサポートを行っています。

精密農業というのは、農家のために出来高の変動による収入の変動を減らす手助けをし、より適正に肥料や農薬を使い、水やりをすることで、コストの削減と地球環境に優しい農業を実現するためのテクノロジーを指します。

ディア社はこの分野でも進んだ取り組みをしてきており、それが同社にある種のサブスクリプション型の収益をもたらしており、同社の収益の安定化にも寄与しています。

農業人口の減少により、より自動化を求める農家が増えつつあることに加え、パンデミックにより移民や海外からの安い農業労働力に頼れなくなったことで、デジタル・リモート化への期待も高まっています。

加速する農業テクノロジーが追い風

精密農業への進化がより加速する可能性も出てきています。

既に導入された新しい技術で、Exact Emerge、Exact Applyというシステムがあります。

「Exact Emerge」は種まきをその作物の種類に合わせて、種一つずつを正確な深さと間隔で高速(10mphということなので、約時速16km。)でまいていくシステムです。

「ExactApply」は水撒きなどのノズルコントロールシステムです。適正な量を適正な間隔で無駄なく散布していくものです。

これらは既存の農機に後付できるものでもあるので、農家としても導入しやすく、これらの売上は、年率で40~50%レベルで増加しているようです。

更に、除草ロボット「See & Spray」も2021年から商用化の予定です。

これは機械学習により作物と雑草を農機が見分けて、雑草だけに適正な農薬を散布するものです。

農薬散布量を90%削減すると言われています。

また、伝統的な農業では、当初、畑レベルで管理をしていましたが、それがゾーンごとになり、コネクテッド(Connected)化により、今や一つ一つの植物レベルでの管理をし、生育状況、適正なケアを行い、より良い状態での収穫が可能になるようにコントロールされてきています。

農機に据え付けられたカメラから、作物一つ一つの生育状況をクラウド上のデータベースに集め、その分析結果をまた農機にフィードバックしていくような仕組みも構築しつつあります。

こうした自動化は、操作の自動化にも当然つながっていきます。

GPSも利用して自動運転化も視野に入っています。

公道での自動運転化に比較するとハードルが少ないので、自動化はより早く普及していくものと思われます。

配当などの株主還元にも積極的

ディア社は最新鋭のトラクターを昨年発表しています。8RXというモデルです。

(ディア社のサイトから)

詳細は省略しますが、畑で使うのに現時点では最適のモデルと言われています。

足元はパンデミックの影響で売り上げは減少しています。

第3四半期(7月末までの3カ月)の業績は絶対値では減少しているものの、予想より良いものでした。

売上は昨年同期比で-11%、一株当たり収益で-9%でしたが、アナリスト予想を大幅に超えています。

精密農業への長年の投資の成果が花開き始める時期と、先ほども述べた農機買い替えサイクルが今後7年くらいかけてくる可能性があり、業績への期待感も大きいです。

また、株主還元も積極的に行っています。

過去15年配当を上げており、過去10年でみても配当を約2.7倍にしています。

また、自社株買いも積極的に行っており、過去15年で約37%の株数を減少させています。

好業績、ビジネスへの期待と株主還元姿勢がこの環境下でも株価を押し上げ、年初来で+35.5%とNASDAQをも上回る高パフォーマンスとなっています。

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