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決済タイミングと脳のワーキングメモリの関係

決済をするときやポジションを建てるとき、恐怖や不安を感じる、あるいは何ともいえない興奮状態になることがある、という方は少ないことでしょう。

これらの原因は脳の「ワーキングメモリ」が作用しているということが近年の研究で分かってきました。

ワーキングメモリが投資とどのように関係しているのでしょうか。

今回は決済タイミングと脳のワーキングメモリについてご紹介します。

ワーキングメモリとは

ワーキングメモリとは、脳が情報を処理する能力のことをいいます。

ワーキングメモリは人が瞬時に記憶する「短期記憶」と、長期に渡り知識として活躍する「長期記憶」との間に位置しており、「脳の指揮者」として存在しています。

脳が情報を処理するとは、その情報を扱いやすく変換することを意味しています。

脳が情報を操作して処理をしている最中、主に脳では前頭前野という脳の前にある部位で関連する他の部位から電気信号を受け取り、その情報を活用していることが脳機能画像検査によって分かってきました。

例えば、ワーキングメモリを使う代表的な職業に「航空管制官」が挙げられます。

航空機を安全で円滑な運航を維持するには、航空管制官が機器、天候、交通量など目まぐるしく変化する情報を処理しながら、パイロットとコミュニケーションを取り、さらには緊急時には自分の判断が大勢の命を左右するというストレスにも耐えなければなりません。

これらの状況は個人投資家の心理状態と非常に類似していると言えないでしょうか。

ワーキングメモリが作用するシチュエーション

  • 情報に優先順位をつける
  • 重要なものごとに集中する
  • ものごとをすばやく考える
  • 賢くリスクを冒す
  • 長期目標を達成する
  • 緊迫した状況でもポジティブでいられる

上記はワーキングメモリが日々、日常的に作用しているシチュエーションですが、投資に置き換えて言えば、多くの方に思い当たる節があることでしょう。

様々な指標や決算に目を通し、類似する企業の業績を見比べる。

どれも重要そうな指標ばかりで混乱しそうになる。

その中から優先順位をつけ、状況に応じて投資判断を行う。

こういった行為のひとつひとつにワーキングメモリが左右しています。

また、目の前の欲求に屈してしまう、投資においては目先の少額の利益で決済してしまうことや将来、上がると分かっているのに一時的な下落で損切ってしまうなど、恐怖に直面できないこともワーキングメモリが作用しきれていないことを表しています。

情報過多がワーキングメモリを抑制してしまう

投資をする際には、膨大な情報の中から採用する部分だけをピックアップしなければなりません。

ある企業に投資すべきかどうかを判断するとき、その企業の経営者、市場動向、潜在市場規模、純利益、過去から現在までの株価推移など、すべての情報を集めた上で判断を下す場合、情報過多となってワーキングメモリが機能しなくなります。

これは書類が散らばったデスクや、パソコンのデスクトップがファイルで埋もれている中で仕事がやりにくくなるような状況と似ています。

情報過多と損益を調査した実験では以下のようなものがあります。

  • 4組のトランプ(52枚 ✕ 4セット)を用意し、何枚かのカードが賞金をもたらし、何枚かのカードが借金をもたらすことを被験者に説明する。4組のカードを伏せたのちに、被験者のターンになったらひっくり返し、利益を競う。
  • 次にランダムに選ばれた4組のトランプが賞金または借金をもたらすことを説明する。同様の手順で利益を競う。

この実験では前者ではどのカードが利益をもたらし、借金をもたらすかを覚えることで被験者たちが利益を競うことができた一方で、後者ではどの組が利益になるか判別に時間を要するようになり、結果、借金も増えたという実験結果があります。

情報過多に陥った状況で判断を下そうとすると、ワーキングメモリが抑制されて、賢明な投資判断ができないことをこの実験では物語っています。

ワーキングメモリが抑制された状況下では、戦略や分析などおかまいなしに、感情や本能のおもむくままに決断を下すようになってしまいます。

目先の利益を無視できるかどうか

目先の利益に満足し、長期目標をすぐに諦めてしまうと、本来なら得られるであろう長期に耐えた分だけの大きな利益を手放すことになってしまいます。

目先の利益を無視し、長期的目標を達成するには「するべき」ことと同じくらい「するべきではないこと」がたくさんあります。

ここで、心理学者のウォルター・ミシェル氏が1968年に行った有名なマシュマロ実験をご紹介しましょう。

実験の手順は以下のとおりです。(対象は4~6歳の子どもたち述べ600人以上)

  • 個室の中で子どもにマシュマロを見せる。
  • ミシェル氏が15分間部屋を出る前に「マシュマロを食べたかったらベルを鳴らしてごらん、そうしたら食べていいよ」「もし、食べずにいられたらもう1個あげよう」と説明した。
  • 子どもたちの反応を見て、その後40年以上(2011年)経ったのちに追跡調査をする。

子どもたちの中には、ミシェル氏が部屋を出た途端にマシュマロを見ないように目を手で覆う子どもや、我慢できずに口に入れてからベルを鳴らす子どもなど様々でした。

結果、マシュマロを2個手に入れた子どもと、目先にあった1個のマシュマロしか食べられなかった子どもと大きく2つに分かれました。

実験から40年以上経ち、40代となった子どもたちにSAT(大学適性試験)を受けてもらい、集計したところ、マシュマロを我慢した子どもたちの方が成績が良かったというものです。

また、ミシェル氏は脳スキャナーを被験者たちに協力してもらったところ、マシュマロを我慢できた子どもたちは、大人になって前頭前野の活性化が見られたとのことです。

情報こそが投資において最強のツールとなることは間違いないでしょう。

しかし、そのツールをいつ使うか。

つまり、ポジションをいつ建て、いつ決済するかは情報の他に心理的な要素が重要であり、ワーキングメモリが作用しているということをご紹介しました。

また、情報収集に専念してばかりでは、投資判断に支障を来たしてしまう恐れがあることにも触れました。

今回、ワーキングメモリが低いのではないかと心配になった方でも、ワーキングメモリは後天的に鍛えられるようです。

サプリメントではブルーベリーなどに含まれる「フラボノイド」を多く摂取すること、トレーニングでは日本でも一時的にブームにもなった「数独」やランニングをするとワーキングメモリに良いようです。

気になった方は是非、一度試してみると良いかもしれません。

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