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変動持分事業体とは? VIEスキームを用いた中国企業の米国上場を解説

変動持分事業体は日本だとあまり馴染みのない用語になりますが、アメリカ企業や中国企業への投資に興味がある方にとっては重要な用語となります。

そこで今回は変動持分事業体とは、どんな用語なのか詳しく解説します。

変動持分事業体が登場した背景や、中国企業がアメリカに上場できる仕組みなども合わせて解説します。

変動持分事業体とは?

変動持分事業体とは、特別目的事業体(資産を証券化するための事業体の総称:SPE)をどのように連結範囲に含めるかを定めた基準になります。

Variable Interest Entitiesの頭文字をとってVIEとも呼称され、現在では外資規制のある国や分野に投資する際の手法として用いられています。

VIEが登場した背景

VIEが登場した背景には、2001年にアメリカエネルギー会社大手のエンロンが、巨額の負債を抱えて倒産した「エンロン事件」が関係しています。

エンロンは社員数21,000名以上・年間売上高が1,110億ドルという世界有数の大企業でしたが、1980年代の終わりに粉飾決済を行うようになり、見かけ上の利益を膨らませていました。

そして、取引で起きた損失や保有する不良資産などを連結決算対象外の子会社(SPE)3,000社に付け替えることで、巨額の損失を隠していました。

しかし、2001年にこれらの手法が明らかになり、巨大な債務があると判明した結果、世界有数の大企業は倒産となったのです。

日本でも似たような事例はあり、2004年の「ライブドア事件」が上げられます。

当時のライブドアは連結外を装った投資ファンドを活用して、自社株の資金調達や利益操作などを行っており、エンロンの粉飾決算と似ている点が幾つもあると指摘されています。

エンロン事件を引き金に、アメリカでは他企業の粉飾決算が次々と発覚し、加えて2008年に起きたリーマンショックなどもあり、米国財務会計基準審議会は連結モデルに係わるガイダンスを改訂したのです。

目的はエンロン事件前まではSPEを用いた常習的な損失隠しを防ぐことでしたが、現在では中国企業などが資金調達の活動範囲を広げるために使用されることも少なくありません。

VIEの定義

VIEの定義や意味を簡単にまとめると、「投資者(企業)がVIE(変動持分事業体)から経済的便益の提供を受けるならば、議決権の半数によらず連結対象とみなす」という内容です。

アメリカでは連結モデルはVIEモデルと議決権モデルの2種類があり、まずVIEモデルかどうかを5つのフローチャートを用いて判断し、VIEモデルでなければ議決権モデルと判断します。

  1. 連結ガイダンス((ASC810)の適用範囲外に該当するか
  2. 変動持分モデルの適用範囲外に該当するか
  3. 上記に該当しない場合、報告企業は法的事業体に対する変動持分を保有しているか
  4. 保有している場合、その法的事業体はVIEであるか
  5. 法的事業体がVIEであるなら、報告会社は主たる受益者であるか

上記のフローチャートを全て理解するとなると、専門的な知識や解説が必要になるため省略しますが、ポイントは「VIEの受益者である企業は自身のバランスシートに連結しているVIEを記載する」必要が生じたことです。

投資者(企業)が直接投資をしていない場合でも、ある契約等によって経済的便益があれば連結対象となるVIEモデルによって巧妙に隠されていた損失が浮き彫りとなったのです。

VIEを導入したことによる変化

不透明で粉飾決算が横行していた連結モデルの是正として導入されたVIEでしたが、予想していなかったことが起きています。

それは、VIEを用いて中国に本社がある企業の上場で、近年で代表的な事例となっているのはアリババグループのVIEスキームです。

2014年5月にアリババグループはニューヨーク証券取引所でIPO(新規株式公開)申請を行い、上場登録をしました。

しかし、中国では中国政府が自国のインターネット産業に対して外資が参入するのを禁じているため、ニューヨーク証券取引所に上場することはできません。

この矛盾を解消したのがVIEを用いた手法で、アリババグループは法人登記所在地をケイマン諸島にして、実際に稼働しているビジネスの本拠地を中国の杭州に分けました。

そしてケイマン諸島にある持株会社を上場することで、株主は杭州にある運営会社に対して、子会社や契約を通じて実質的な株主の権利を得ています。

上記の説明は簡素化したもので、実際の仕組みはさらに複雑な内容となっていますが、外資の参入を禁じられた中国ハイテク企業にしてみればVIEを用いた手法は資金調達を簡易化する手段となり、2012年までに中国に本拠地がある企業117社が上場しています。

VIEのリスク

アリババグループをはじめ、いくつもの中国企業がVIEスキームを用いて外国で上場し、外資を獲得して躍進を遂げました。

資金調達手段として一般化したVIEでしたが、同時にリスクも指摘されています。

中国に本拠地のある企業が、海外上場の主体となる持ち株会社を別として上場する手法はアメリカでは合法とされています。

しかし、当時の中国は法整備が間に合っておらず、アリババグループの上場時は黙認状態でした。

いずれは規制の対象になるのではないかという専門家の意見もあり、中国では外資の投資方法に関する議論が行われてきました。

そして2019年3月に「外商投資法」が可決され、2020年1月1日より施行されています。

施行された外商投資法では、外国人や外国の企業、団体が中国企業への投資をする際の新たなルールや、競争環境の公平さ、知的財産権の保護強化などの内容が盛り込まれています。

この法案が可決されるまでの間にVIEスキームに関する議論は繰り返されてきましたが、施行された法案にVIEスキームが適用されるかどうかは明確ではありません。

仮に適用されるなら、VIEスキームを用いた企業の上場や発行した株式が無効となるリスクがあります。

記事執筆時点では専門家でも意見が分かれていますが、現実的な見方としてVIEスキームを用いた企業に規制が掛かることは少なく、これからもVIEスキームを用いた中国企業の上場は続くと考えられています。

しかし、VIEスキームを用いた中国企業の上場は中国政府だけでなく、アメリカでも問題視されており、アメリカ側で規制をかける動きがあります。

上場した中国企業の不正会計とアメリカ議会の対応

2020年4月2日、中国コーヒーチェーン大手のラッキンコーヒーは2019年度の売上高を改ざんした発表しました。

日本円にして約336億円の過大報告は株価の暴落を招きました。

ラッキンコーヒー以外にも中国有数の個別指導オンライン教育会社のTALエデュケーションやGSXテクエデュ、中国動画配信プラットフォームのアイチーイーでも不正会計の告発が起きています。

【米国株動向】不正会計の発覚が相次ぐ中国株、ハイテク株3銘柄が不正会計問題に直面

これらの騒動を受けて2020年5月にアメリカ合衆国上院議会では、中国企業によるアメリカ証券取引所への株式上場を禁止することにつながる可能性のある法案が全会一致で可決しました。

これまでは複雑な変動持分事業体の所有構造だったため、中国企業の会計書類はアメリカの監査法人が確認できず、中国企業の実態は不透明だったという指摘もあり、法案の可決は不透明だった状況を改善する可能性があります。

一方でアメリカの監督が強化されたことで、上場を検討・計画中の中国企業は香港市場で上場するなど方針を転換しています。

まとめ

以上が、変動持分事業体の解説になります。

中国ハイテク企業への直接的な投資が難しいため、VIEスキームによるアメリカ証券取引所への上場は、多くの投資家にとってもメリットがありました。

しかし、中国企業の会計不正やVIEスキームへの規制の動きがあるのを考えると、中国企業への投資には一定のリスクがあります。

投資をする際は、安全資産を用いて、もしものリスクに備えましょう。

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