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ニューヨーク証券取引所の直接上場のルール変更について解説

アメリカのIPOは実施する際のコストが負担となり、資金調達をしたいスタートアップ企業にとって悩みの種となっています。

そのため、コスト削減しつつ上場が可能な直接上場に注目が集まっており、最近では名前の知られたハイテク企業の直接上場が続いています。

そして、ニューヨーク証券取引所での直接上場のルール変更を受けて、直接上場でも資金調達がしやすくなるため、さらに注目が集まると予想されます。

そこで今回は、ニューヨーク証券取引所の直接上場のルール変更について解説します。

直接上場とIPOの違いや、過去に直接上場した企業についても合わせて解説します。

ニューヨーク証券取引所の上場ルールの変更

2020年8月、米国証券取引委員会はニューヨーク証券取引所が申請していた上場に関するルール変更を受け入れました。

これによって、条件を満たした新株が上場初日から取引できる可能性が現実味を帯びてきました。

従来の直接上場(ダイレクトリスティング)のルールだと、取引所に上場する際に新株を発行することはできず、既存の株式だけを上場するため、資金調達の方法としてはIPOに比べて劣っている部分があります。

しかし、ニューヨーク証券取引所は2019年11月頃から直接上場でも新株を上場できるようにルール変更するべく動き出しており、米国証券取引委員会が認めたことは実現に向けて大きく前進したことになります。

従来の直接上場とIPOの違い

直接上場とIPOはどちらも証券取引所に上場するということは同じですが、上場するための株式が新株なのか、既存株なのかという違いがあります。

  • IPO(新規株式公開)…新しく発行した株式で上場する
  • 従来の直接上場(ダイレクトリスティング)…既存の株式だけで上場する

IPOは企業側が発行する株式を銀行や証券会社が主幹事となって機関投資家や個人投資家に売却して、上場します。

IPOだと主幹事が需給や価格の調整役をするため、手数料が発生し、主幹事の顧客が有利になるなどの問題点があります。

一方で従来の直接上場は株主(この場合は株式を保有する企業)が銀行や証券会社を利用せずに、既存の株式を上場する手法です。

主幹事を介さないため引受手数料などのコストを削減でき、IPOにあるロックアップ期間(一定期間、既存株主が売買できないというルール)がないため、すぐに売買する機会が得られるなどのメリットがあります。

ただし、従来の直接上場はIPOと違って主幹事による機関投資家たちへの売り込みなどがないため、資金調達方法に適さないというデメリットがあります。

新しい直接上場のルールは?

今回、米国証券取引委員会が公表した資料によると、2つのルールが加わります。

  • 直接上場で発行される新株の時価総額が1億ドル以上
  • 直接上場前の既存株式と新株発行の時価総額の合計が2億5000万ドル以上

どちらかを満たしていると、新株でも直接上場することが可能となります。

参照

直接上場のルール変更のメリット

直接上場のルール変更による大きなメリットは、やはりIPOを実施する際のコスト削減です。

近年、インターネットやAIを活用したハイテク企業の大型IPOが続いていますが、度々指摘されているのがIPOを実行するのに必要なコストです。

IPOを行う場合、米国証券取引委員会に登録する費用、上場費用、印刷費、法務費、引受手数料など、各種の費用が発生します。

これらの費用で最も大きな負担となっているのが引受手数料です。

過去にあった例でいうと、2011年にIPOに成功したZipcar社は公募総額1億7,400万ドルもの資金を集めました。

しかし、同社の資料によると1株当たり1.26ドルの引受手数料を支払っており、総額1,218万ドルが引受手数料として差し引かれています。

つまり、公募総額の約7%が主幹事に支払ったコストという計算になります。

また、大型IPOだと引受手数料のパーセンテージを引き下げる交渉が可能となっていますが、それでもFacebookが新株発行したときは約1億7,600万ドル、スナップは8,500万ドルの引受手数料を支払っています。

新規発行した株式が直接上場できるようになれば費用が大幅に削減でき、ハイテク企業の上場が過熱すると考えられています。

過去にあった直接上場した企業

2018年に音楽ストリーミング配信サービスの最大手であるSpotifyが直接上場をしました。

当時は従来のルールのため、既存株式での上場となります。

当時のSpotifyは月間アクティブユーザーが1億5,700万人、うち7,100万人が有料会員となっており、世界でもトップクラスのユーザー数を獲得しています。

2006年に起業してから非上場企業だったSpotifyは合計27億ドルを私募で調達しており、IPOで資金調達をする必要はありません。そのため、IPOではなく直接上場を選びました。

時価総額が約200億ドルのSpotifyがZipcar同様に引受手数料を7%支払っていた場合、引受手数料だけで約14億ドルもの費用が発生します。

Facebookのように引受手数料のパーセンテージが引き下げられていたとしても、3億ドル前後の引受手数料が掛かってしまいます。

しかし、直接上場したSpotifyの費用は約4,571万ドルで、IPOした場合の予想に比べて費用を大幅に節約しています。

Spotifyの成功をきっかけに、IPOではなく直接上場に注目が集まり、ビジネスチャットアプリのSlackが直接上場を行い、投資の専門家からもIPOよりも効率的なのではないかという声が上がっています。

日本人投資家にとってのメリット

直接上場のルール変更は、日本人投資家において大きなメリットがあります。

それは、期待されている企業の新株購入のハードルが下がることです。

そもそも、日本市場と違ってアメリカ市場のIPOに日本人の個人投資家が参加するのは不可能に近いです。

IPOを任されている主幹事は長期に株式を保有する安定した株主を募るため、個人投資家に割り当てられる株数が非常に少ないです。

直接上場のルールが変更になり新株が上場するようになれば、日本人投資家でも参加しやすい環境となります。

ただし、アメリカ市場で株の売買を行う場合は、アメリカ株の売買ができる口座を開設し、向こうの取引ルールに従う必要があります。

投資を始めたばかりの方はハードルが高く、損失を生む可能性があるので注意しましょう。

まとめ

以上が、ニューヨーク証券取引所の直接上場のルール変更についての解説です。

直接上場は既存株式を取引所で売買可能にする手法でしたが、ルール変更によって新株もそのまま上場できるようになるため、スタートアップ企業が資金調達しやすくなります。

IPOは株価を歪ませるという指摘があり、最終的な価格を一握りの大手機関投資家が決めるため公正な取引ではないと考える専門家もおります。

ニューヨーク証券取引所の直接上場のルール変更は、これらの問題点を解決する大きな一歩と期待されています。

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