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米国給与保護プログラムとは?給与保護プログラムの効果と問題点を解説

新型コロナによる経済悪化を受けて、世界各国では大型経済政策が実施されています。

なかでもアメリカは規模の大きな経済対策を打ち出しており、経済の安定化を図ろうとしています。

そこで今回は、米国給与保護プログラムについて解説します。

アメリカの経済対策としては異例の内容となっており、アメリカの失業率に大きな影響を与えました。

米国給与保護プログラムとは

米国給与保護プログラムとは、トランプ政権が新型コロナ拡大による従業員の雇用や給与を守る経済対策です。

2020年3月下旬に成立し、3,500億ドルの大型経済対策では主に従業員数が500人以下の中小企業を支援する内容となっています。

米国給与保護プログラムの制度概要は下記になります。

  • 従業員数500人以下の中小企業を対象に、人件費の5月分を融資(上限は1,000万ドル)
  • 融資の目的が給与や保険料、家賃などの支払いに充てた場合は返済を免除
  • 融資額の75%以上は人件費とすることを義務化
  • 従業員を減らしたり、給与を一定額以上カットすると免除額を減額

概要からも分かるように、この経済対策は従業員の雇用と給与を守ることに重点を置いており、融資の形を取っていますが雇用を守っていれば返却が免除になるなど、これまでのアメリカの経済対策と異色の内容となっています。

日本は終身雇用制度が重視された時代から、企業が従業員を簡単に解雇できないようにいくつもの規制があります。

一方アメリカは、不景気や会社の経営が悪化した場合は従業員を一時解雇(レイオフ)して、会社を守る手法が主流でした。

解雇された従業員は失業保険でカバーするという事後救済型のアメリカでも、実質的な補助金を給付する事態となり、それだけ新型コロナによる経済の悪化が深刻だと示唆しています。

米国給与保護プログラムのその後

3月下旬にスタートした米国給与保護プログラムですが、驚くことに4月16日に新規受付の停止を発表しました。

なんと、用意した3,500億ドルが2週間で枯渇したのです。

トランプ政権の予想をはるかに超えた結果となり、共和党と民主党はすぐさま予算の増額を決定。

最終的な財源は6,590億ドルまで引き上げられ、8月3日時点では融資総額が約5,210億ドルを突破しました。

また、本来なら申請期限は6月30日までのはずでしたが、トランプ大統領は8月8日までに延長する法律に署名しました。

記事執筆時点では申請期限が過ぎておりますが、トランプ大統領は8月15日に追加給与保護プログラムの準備ができていると発言しています。

米国給与保護プログラムの効果

アメリカでは異例とも呼べる給与保護プログラムの効果は多くの業種に及んでいます。

8月3日時点で約5,210億ドルを融資しましたが、内訳を分析すると下記のようになっています。

  • ヘルスケア(病院などを含む)・社会支援組織…約670億ドル
  • 専門サービス…約664億ドル
  • 建設…約645億ドル
  • 製造…540億ドル

上記4つの業種が飛びぬけて多く、全体の約50%近くを占めています。

上記の業種に続いて、宿泊施設や飲食店、小売業、卸業、輸送、不動産など各業種が10億ドル~40億ドルほど融資されており、上位10業種で全体の約80%を占めています。

ヘルスケアや建設、製造などを含めた10業種はどれも新型コロナの影響を著しく受けており、それらの業種に対して米国給与保護プログラムが効果的に作用したとも言えます。

アメリカの2019年の平均所得は年間約52,000ドルです。

米国給与保護プログラで融資されるのは2.5ヵ月分のため、換算すると約10,800ドルになります。

トランプ政権が米国給与保護プログラムとして用意した予算額は追加分を含めて6,500億ドルとなっており、約10,800ドルで割ると約6,000万人になります。

米国給与保護プログラムは給与以外の融資も可能ですが、最大で6,000万人の雇用を2.5カ月分守ることが可能な経済対策となっています。

アメリカの失業率は4月が14.7%、5月が13.3%、6月が11.1%と過去の失業率を振り返っても高い数字となっていますが、新規失業保険申請数の急激な増加を見た専門家の予想では20%を越える可能性も示唆されていました。

専門家の予想よりも雇用が守られているという結果を見ると、米国給与保護プログラムの効果があったとも分析できます。

トランプ政権も効果はあったと声高に主張しており、Twitterで「給与保護プログラムは約500万の中小企業と5,100万人の雇用を救った」とコメントしています。

一方で米国給与保護プログラムには幾つかの問題点が指摘されています。

米国給与保護プログラムの問題点

米国給与保護プログラムは従業員の雇用と給与を守るのが主軸となった経済対策でしたが、下記のような問題点が指摘されています。

  • 8月に入ってから失業保険申請数が上昇
  • スピードを重視してトラブル

それぞれ、順番に解説します。

8月に入ってから失業保険申請数が上昇

8月8日に米国給与保護プログラムの申請期限が過ぎてから新規失業保険申請件数が100万件台に上昇しています。

専門家の分析では2週続けて100万件を割り込むと予想していましたが、予想に反する結果となったのです。

理由の1つとして、米国給与保護プログラムの返済免除の条件を満たした企業の解雇が増えているのではないかと考えられています。

米国給与保護プログラムでは、下記の条件を満たせば融資の返済が免除となります。

  • 融資は指定された使用目的にのみ使用した
  • 融資を受け取ってから 8 週間継続して社員の雇用を維持し給与を支払った

4月・5月に申請をして6月頃から融資を受け取った企業が8月に入ってから従業員を解雇していると考えると、新規失業保険申請件数が増加したのと時期が符合します。

スピードを重視してトラブル

米国給与保護プログラムは内容だけでなく、成立までの速度も異例と呼べます。

スピードを重視するあまり、貸し手である銀行や金融機関と政府機関との間で情報が錯そうしてしまい、混乱が生じています。

たとえば、財務や税務の専門部署がない中小企業では融資の手続き方法が分からず、必要書類などを揃えるだけでも時間がかかり、過去の取引実績がなくても融資は可能なのに拒否されるケースなどが起きてしまったのです。

また、中小企業だけでなく投資企業に対して融資される、留学生による不正融資などが行われるなどの問題も起きており、プログラムの不透明さに疑問の声が上がっています。

まとめ

アメリカは新規失業保険申請件数が経済の健全性を示すパロメーターとなっており、米国給与保護プログラムは失業率を抑えるのに一役買っていました。

米国給与保護プログラムは約1250億ドルの資金を残したまま終了しましたが、トランプ大統領は追加申請の準備に関するコメントを出していることもあり、再び実行される可能性はあります。

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