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特別買収目的会社とは?SPACの歴史やメリット・デメリットを解説

出典:Getty Images

2020年上半期は歴史的な暴落や金や仮想通貨の高騰など、これまでの投資の歴史でも類を見ない結果となっています。

そのなかで注目を集めているのが、アメリカの特別買収目的会社(SPAC)です。

日本では馴染があまりない用語ですが、IPOとは別のやり方で上場を目指す方法ということもあり、過去に日本での解禁が検討されました。

そこで今回は、特別買収目的会社とはどのような仕組みなのか解説します。

注目される資金調達術、「SPACs(スパックス)」とは?その仕組みと意義について

特別買収目的会社とは?

特別買収目的会社とは、特定の事業を持たず、未公開会社や事業を買収することのみを目的とした投資ビークル(組織体)です。

英語ではSPAC(Special Purpose Acquisition Company)と呼称します。

SPACのポイントは、IPOをおこない市場に上場してから未上場の企業を買収し、最終的には買収された未公開企業は上場企業となることです。

IPOの段階ではどの企業を買収するか決まっていないことも多く、「ブランク・チェック・カンパニー(白地小切手会社)」や「ブラインド・プール」などと呼ばれることもありますが、1980年代のトラブルもあったことから、現在は下記のような投資家保護の枠組みが揃っています。

  • 資金の信託
  • 買収期限の設定
  • 買収承認プロセスの厳格化
  • 買収失敗時の資金の返還

SPACの歴史

SPACは1980年代頃からシステムとして登場していました。

当時のアメリカ株式店頭取引は現在ほど規制が厳しくなったこともあり、未上場・未登録の株式が取引される市場は不正の温床とされていました。

「ブランク・チェック・カンパニー」などの用語はこの頃に登場しました。

下記は当時あった不正の温床の一例です。

  • ブランク・チェック・カンパニーを通じて資金を調達し、買収候補のうわさなどで株価を吊り上げたら売り抜く
  • 自らが出資した会社を高い価格で買収させる
  • 調達した資金を私的に流用する

多くのトラブル・訴訟が発生したことを受け、1992年に米国証券取引委員会がブランク・チェック・カンパニーの規制を強化して、現在のSPACに至ります。

一方で1990年代後半から2000年代初めはGoogleやAmazonを始めとしたITバブルの頃で、魅力ある企業に対して投資家が新規公開株を購入するIPO市場が過熱していたこともあり、SPACを使う頻度は急速に減少しました。

ITバブルから現在に至るまでのSPACの歴史

ダーティーなイメージを拭いきれなかったSPACですが、ITバブルが終わった2006年頃から注目を集めるようになります。

2006年には37社が合計で34億ドルを、2007年には66社が121億ドルをIPOで調達しました。

2010年代に入るとインターネット技術の進歩やスマートフォンの普及、SNSを利用するユーザー数の増加などに合わせて、新しいAIやIoTを開発した企業の上場が目立つようになります。

ベンチャーキャピタルの投資を受けて上場・買収されるケースもありますが、2011年に設立したSocial Capital(ソーシャルキャピタル)はベンチャーキャピタルなのに2017年に上場したことで注目を集めました。

その際にSocial Capitalの創業者の一人であるChamath Palihapitiya(チャマス・パリハピティヤ)氏は「現在のIPOはプロセスが破綻しており、スタートアップ企業は上場するタイミングを待つことを強いられている。その間に従業員が離職してしまい、企業の価値を損ねる」などの発言をしています。

2020年上半期は新型コロナの影響を受けて従来のIPOプロセスを進めるのが難しくなっています。

一方で各国中央銀行は金利の大幅な値下げを実施しており、多くの機関投資家が「金余り」の状態となっています。

金や仮想通貨、ナスダックなどが大幅に高騰したのは、持て余した資産が流入した結果と言えます。

SPACでは買収が進まなかった場合は、最長2年で金利を付けて返金する制度となっています。

買収の成否に関わらず、出資者は一定の利益が得られるSPACは魅力的に映ったのか、2020年7月30日時点で51件のSPACが上場しており、合計で190億ドル(約2兆円)の資金を集めるなど、過去に例を見ないほどのハイペースとなっています。

SPACのルール

SPACは1993年の変革以降、投資家保護のために幾つかのルールが設定されています。

  • IPO後に調達した資金の9割以上を信託する。残りは運転資金として用いられる
  • IPOから12~18ヵ月の間に買収をアナウンスして、24ヵ月以内に完了する
  • 買収に失敗した場合は投資家に事前に決めた利息を付けて返還する
  • 買収企業の選定は20%以上の株主の同意が必要

上記は代表的なルールの一例ですが、これらのルールがあることで投資家はSPACに安心して出資できます。

SPACのメリット

SPACのメリットは、過去に比べて投資家保護を重視するルールができたことのほかに、少額の資金で未公開株式取引(プライベートエクイティ)に参加できることです。

SPACを運営する経営陣は投資銀行やベンチャーキャピタルなどの、いわゆる「投資のプロ」達ばかりです。彼らは未公開企業を買収して上場した後も事業に関わるため、収益の上がらない企業を買収することはありません。

つまり、将来的に見ても収益を上げるという自信があるからこそ、買収を進めるのです。

一般的にIPO株は上場した直後こそは株価が高騰しますが、その後は低迷したり安定した状態を保つケースが珍しくありません。

これは上場した企業の事務運営能力が劣っている可能性があり、会社を大きくするビジネスモデルが確立できなかったパターンになります。

SPACは投資のプロが進める案件のため、IPO株に比べてその後の収益を見込めるのは魅力的です。

また、通常の未公開株式取引に比べると、投資回収までの期間が短いのもメリットに上げられています。

本来なら5年から10年はかかることを、SPACでは最長2年までに短縮しているため、投資資金の回収がしやすいです。

SPACのデメリット

一方でSPACには2つのデメリットがあります。

  • 買収を短期間で完了しなければならない
  • 未公開企業への投資リスク

投資家保護のためとはいえ、SPACは最長2年以内に買収を完了しなければなりません。

それも、出資した20%以上の株主を納得させられるだけの企業を選定しなければならないため、買収完了までの時間が短いです。

そのため、締め切り日を急ぐあまりに「買収企業株式の買い取り金額アップに同意せざるを得ない」などの不利な立場に置かれてしまい、結果として利益が少なくなるケースがあります。

また、IPO株同様に未公開企業への投資のため、普通の企業に比べて損失を出す可能性は高いです。

そのため、通常の株式投資や投資信託に比べて投資リスクは高いと言えます。

ほかにも、本来なら上場する企業は収益の実績や事業計画などをきちんと提出して審査を受けなければなりません。

ソフトバンクの肝いりだった「WeWork」のように、期待されながらも実態は赤字という企業がSPACを通じて上場すれば、市場の信頼と健全性を損なうと批判の声が上がっています。

日本ではこの問題を解決できず、2008年にSPACの上場を解禁する動きもありましたが、結局は取りやめとなりました。

まとめ

以上が特別買収目的会社に関する解説になります。

SPACはIPOで投資家より資産を集めているため、日本の個人投資家でも参加することは可能です。

日本では認められていませんが、興味がある方はアメリカの証券会社などを調べてみましょう。

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