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香港の優遇措置停止とは?香港の歴史と香港国家安全法成立後の影響を解説

香港はイギリスから中国に返還された1997年から2047年まで、特別行政特区として一国二制度が適用される約束でした。

しかし、2020年5月に中国が香港国家安全法の立法を決定したことで、アメリカのトランプ大統領は香港の自治が崩れるとして優遇措置を停止すると声明を発表しました。

そこで今回は、香港の優遇措置停止とはなんなのか解説をします。

香港がアジアの金融センターへと成長した歴史や、香港国家安全法が設立した後の影響なども併せて解説していきます。

香港がアジアの金融センターへと成長した歴史

香港は1842年の南京条約によりイギリスの植民地になってからは、1941年~45年の日本占領期を除く、1997年までの約151年間もイギリスの統治下にありました。

その間に東京都の約半分しか陸地面積が無い香港は、アジアの金融センターと呼ばれるほど経済の重要拠点へと成長。

ここまで香港が大きく成長した最初のきっかけは、第二次世界大戦後の中国の政治混乱と工業化です。

1946年~1960年代までで、香港の人口は100万人から300万人へと増加。

増えた人口の中には中国の富裕層や経営者もおり、人口増で雇用が足りなくなった香港経済と上手くマッチし、香港は急速に工業化が進みました。

ですが、1970年代末に中国の政策によって、多くの工場が中国に移転することになってしまい、製造業の国内総生産に占める割合は最盛期の20%から5%へと低下しました。

主要な産業を失った香港は、1980年以降は国際金融センターとしての役割を確立していきます。

元々、イギリスの植民地だった香港は英ポンドと香港ドルの公的な為替市場や、米ドルとの民間の為替市場がありました。

公正で安定した通貨、自由な市場システムを確立していたことから、中国を含めた近隣諸国の資金が集まり、結果として上海に代わる中国最大の金融センターへと成長したのです。

当時は現在ほどシステムが便利で高速化していない事もあり、ポンド建債券の米ドル売却といった取引はヨーロッパでは出来ませんでしたが、香港なら可能だったため、アジアのみならず欧米の金融業者の資金も集まるようになり、香港為替市場の重要度は高まります。

そして、2000年代に入ると存在感を増していく中国の玄関口として、中国とほかの国々を繋ぐハブのような役割を果たしていくようになったのです。

香港の一国二制度とアメリカの優遇措置

1997年に中国に返還された香港ですが、中国の法律や制度がそのまま適用されるのではなく、中国の特別行政区となり「一国二制度」の政策を50年間(2047年)維持するという約束を締結しています。

一国二制度とは、中国本土とは異なる制度を適用することで、香港は特別行政区として行政・立法・司法権を有し、通貨や金融システムを維持できるという内容になります。

つまり、香港は中国の一部でありながら、中国とは違ったルールの土地だったのです。

この制度が維持されるのを条件に、アメリカは1997年より「米国-香港政策法」を施行しています。

主な内容はアメリカ合衆国における香港の取り扱いについての規定で、香港に対して関税を低くして、ビザ発給をしやすくし、税関手続きの簡略化、銀行業や法執行を欧州と同じ扱いにするなどの面で中国とは異なる待遇をしてきました。

特に「香港ドルと米ドルの自由な交換を認める」という措置は、香港をアジアの金融センターに押し上げた要因でもあります。

これが、トランプ大統領が取り消すと声高に主張している優遇措置になります。

アメリカは2019年11月に香港人権民主方を成立させています。

この法律は、香港が中国政府から独立した状態であり、優遇措置に値するかどうかを義務付ける内容が盛り込まれており、この法律を根拠に優遇措置を停止することが可能です。

ほかにも、アメリカ政府は香港に所有している不動産を売却して資産を引き上げようと検討したり、米国民の帰国を促すだろうと専門家は予測しています。

これは全て、一国二制度が停止となり、香港が中国本土と同じ扱いになることで、アメリカの資産が差し押さえられたり、アメリカの市民が拘束、逮捕される可能性が浮上しているからです。

中国が導入する香港国家安全法とは

国家安全法とは、「国家政権、主権、統一および領土保全、人民の福祉、経済社会の持続可能な発展、その他の国家の重大な利益に危険がなく、内外の脅威に侵されない状態」(第2条)を維持するために「売国、国家分裂、扇動反乱、政権の転覆および転覆を扇動するあらゆる行為、国家機密の窃取および漏えい、国外勢力による浸透・破壊・転覆・分裂活動を、防止・制止・処罰する」(第15条)法律になります。

2015年7月1日に中国本土で施行されると、中国本土で活動していた人権派弁護士や活動家が数百人も逮捕される騒動へと発展し、言論への規制も強化されました。

条文の抜粋を見ても分かるように、あまりにも幅広く規定した法律で、どのようにも解釈できる内容となっています。

1997年に香港が中国に返還されてから、中国本土側は香港に対して反政府活動などを取り締まる法律を作るように求めていましたが、香港側は応じてきませんでした。

2019年になって拘束された容疑者を中国当局に引き渡す「逃亡犯条例」の改正案が、大規模なデモによって取り下げられたことにより、むしろ香港市民の民主化への意識が高まりました。

そのため、今回の国家安全法の導入は、香港がやらないなら自分たちでやると言わんばかりに、2020年5月に行われた全国人民元代表会で、香港に国家安全法を立法する決定をしました。

立法する決定のため、記事執筆時点では制定や施行に関する発表はありません。

しかし、6月28日~30日に開かれる全国人民代表大会常務委員会で成立する見通しは高いです。

香港国家安全法の草稿では、「国家の安全保障を脅かす行為に対して、中国当局が香港住民を直接訴追できる」という内容となっています。

この「国家の安全保障を脅かす行為」という定義は曖昧なため、中国で施行された時と同様の逮捕劇が起きるのではないかと予想されます。

香港経済界は容認の姿勢

香港の自治を揺るがす香港国家安全法ですが、香港の経済界はどちらかというと容認する姿勢を取っています。

理由の一つは、国家安全法は自由貿易港としての立場や資本移動の自由などについては明確に阻害する内容となっておらず、経済的にはあまり大きな影響を受けないと考えているのです。

イギリスの金融大手HSBCホールディングスも、香港国家安全法は「香港の経済と社会安定の長期的な維持に資すると信じている」と声明を発表しました。

また、香港は新型コロナの影響に加えて、昨年から続くデモの影響で経済的に苦しい状況が続いております。

現在、中国の各都市を含めた巨大経済圏に香港も組み込まれつつあるため、経済回復のために国家安全法を容認するという選択をしたとも読み取れます。

国家安全法が成立した後の香港

香港国家安全法に対して、アメリカやEUからは批判の声が上がっており、トランプ大統領は香港の優遇措置を停止すると宣言しています。

もし、停止が実行されれば、昨年から続く米中貿易問題がさらに悪化し、新型コロナによって冷え込む経済が更に減衰する可能性があります。

どの優遇措置をどこまで停止するのかは記事執筆時点だと不明です。

仮に香港ドルと米ドルの自由な交換まで停止になれば、香港ドルの価値は大幅に下落し、香港がアジアの金融センターという地位から転落します。

また、停止措置が実行されなくても香港から資金の引き上げが続けば、やはり金融センターとしてのランクは下がってしまいます。

実際にランクダウンの動きは起きており、イギリスのシンクタンクが2020年3月に発表した「世界金融センター指数(GFCI)」のランキングで、香港の金融センターは3位から6位へと転落しました。

これは、昨年から続くデモ活動によって経済活動が阻害されているというのが理由でしたが、国家安全法が設立して香港の金融システムの公正さが揺らげば、更なるランクダウンは免れません。

次回の発表は2020年9月となっており、香港国家安全法やトランプ大統領の優遇措置停止などと合わせて注目が集まっています。

まとめ

以上が、香港の優遇措置停止の解説になります。

香港、中国、アメリカは日本と関係の深い国だけに、それらのバランスが崩れるときに影響を受けます。

今後の中国やアメリカの動きから目が離せません。

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