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PER(株価収益率)が低い株は必ずしも割安ではない

出典:Getty Images

株価を比較する方法はたくさんあります。配当利回りを重視する投資家もいるでしょうし、PBR(株価純資産倍率)を見る人もいるでしょう。はたまたROE(自己資本利益率)を注目する投資家もいるかもしれません。
その中でも最も注目される指標は、PER(株価収益率=時価総額/純利益)です。この指標は、その会社の株価が一株当たり純利益の何倍かを示します。たとえば、ある会社のPERが10倍だとします。この会社の利益が一定であれば株を購入してから10年で取り返せる計算になります。あるいは10倍の逆数に注目して10%のリターンと捉えてもよいでしょう。
PERの問題点は、純利益が実績値であれば、単に過去の利益を反映した指標だということです。しかし、実績値ベースのPERでも、今後純利益が減少するとPERが実は割高であったということになります。予想純利益ベースのPERでも将来利益予測が実績値に左右されやすいので、やはり同様の問題が起こります。たとえば過去3年業績が好調で増益し続けている会社の利益を、来年半減する、あるいは赤字になるとは予想しにくいのですが、実際そういうこともしばしば起こります。そうすると予想利益ベースでPERは安く見えても、ふたを開けてみると非常に高くなってしまうことになります。
またPERが高い企業に対しては、その逆のことがあてはまることがあります。たとえば過去3年業績が低迷し、減益し続ける企業への利益予想は低くなりがちですが、実際大幅回復することもあります。そうするとPERが割高に見えていたものが、実は割安だったということになります。また成長株でありがちなのですが、増益し続けてPERも割高に見えるものの、実際次の期で増益ペースさらに加速し純利益が予想以上に膨らむとPERが安くなることがあります。そうすると割高とみられていた株価がさらに上昇することになるわけです。

その企業の成長性を加味するために、PEGレシオ(PER/利益成長率)を使用する投資家もいます。この指標は、株価収益率をEPS成長率で割って計算します。例えば、20%で増益している企業があった場合、20倍のPERの企業のPEGレシオは1になります。PEGレシオが1未満の企業は1を超える企業よりも、成長性の割に割安だと考えられ、よいリターンを見込めると一般に言われています。ただし、上記で見た通り、利益予想は外れることが多く、結果純利益が変化し、また増益率も変化するので、これらの変数はぶれやすく、割安に見えたものが割高になったり、逆のことが起こったりするわけです。
したがって、ぶれやすいバリュエーションよりも、コンセンサス利益と自分の利益予想とのギャップに着目して投資する投資家も結構います。プロの世界ではコンセンサスとの差が、自分たちの付加価値だと考える人がほとんどです。

また利益が大幅にぶれやすい事業、例えば製鉄関連事業は割安になりやすい傾向があります。というのは、利益がぶれやすいので利益予想の不確実性が高く、PEといったバリュエーションも動きやすいからです。一方、花王のようなブランドを持つ企業は、利益のぶれが小さく、バリュエーションがぶれにくいので、PEも高い傾向があります。投資家は、事業やバリュエーションのビジビリティにプレミアムを払うわけです。

バリュエーションの比較は、同じセクター内でおこなわれるべきであり、利益のぶれに大きな差のあるセクター間で行ってもあまり意味がありません。

利益予想のぶれが株価を動かすことが多いのですが、その利益予想をする際の業界分析や競合分析を通して、ビジネスの質を見ることが重要です。買い入れ候補を見つけるのにPERやPBRといった指標でスクリーニングを行う投資家は多く、またクオンツのトレーディングプログラムにもこういったバリュエーションが使われることが多いですが、利益や自己資本簿価の背後にあるビジネスの質を定性的に分析することも重要であることを忘れてはいけません。

こういった投資指標は四季報やブルームバーグ等ですぐ得られ、多くの人がこれらに頼っていますが、ファンダメンタルズを重視する長期投資家は業界分析や競合分析をしっかりやってより長い時間軸に重点を置いて投資を行います。投資指標は1分で見れますが、これだけで投資リターンが得られるほど甘くはありません。地道な業界調査と企業調査、そして忍耐力が必要なのです。また、間違いを認める謙虚さも重要です。

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